4月23日に公表された「2021年版中小企業白書・小規模企業白書」のテーマは「危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ」です。
1)2021年版中小企業白書・小規模企業白書のポイント
- 総論
・感染症により、多くの中小企業が厳しい状況にある。
・事業環境の変化を転機と捉え、顧客のニーズや自社の強みに着目し、事業を見直すことも重要。
- 危機を乗り越える力
・財務状況を把握し、事業環境の変化に合わせた経営戦略を立てていくことが重要
・デジタル化推進に向けては、デジタル化に積極的な組織文化の醸成や業務プロセスの見直しなどの組織改革を、経営者が関与し、全社的に推進していくことが重要。
・事業承継後に新たな取組にチャレンジする企業が多く、事業承継は企業の成長・発展のためにも重要。事業承継の1つであるM&Aはイメージが改善し件数も増加。
- 消費者の意識変化と小規模事業者の底力
・感染症流行による消費者の意識・行動の変化に着目し、新たな需要を獲得する小規模事業者も存在。
・地域とのつながりやSDGsへの取組は小規模事業者の持続的発展に貢献。
・感染症流行下の支援を通じて、商工会・商工会議所への期待は高まっている。
2)中小企業景況調査 資料編
白書作成にあたり、中小企業基本法第10条の規定に基づき、中小企業全般の経営等の実態を調査し、基本情報が提供されています。以下一部をピックアップしてみました。
- 経営上の問題点(第10表)より
産 業 | 今期直面している経営上の問題点 | ||||
1位(%) | 2位(%) | 3位(%) | 4位(%) | 5位(%) | |
製造業 | 需要の停滞40.0 | 生産設備不足10.1 | 製品ニーズ変化9.3 | 原材料価格上昇7.5 | 従業員の確保難6.1 |
サービス業 | 需要の停滞32.4 | ニーズ変化 19.2 | その他13.4 | 従業員の確保難6.9 | 店舗の狭隘 6.1 |
- 調査対象企業のコメント
・1月に発令された緊急事態宣言を受け、観光関係のOEM(清涼飲料水関係)の受注減の落ち込みが大きい。学校食納入部分は、あまり影響を受けていない。[食料品関係]
・DX、デジタル庁の発足、Gigaスクール構想の進捗により、印刷市場が縮小するものと思う。事業の再構築が必要。[印刷業]
・ 自動車のEV化が、急速に進み、関連する業界の設備投資が進んでいる。加えてWeb、リモートの需要で半導体が伸び、人手不足となっている。業界間での差が激しく広がっている。[その他の製造業]
税理士 廣島 清量