来月予定されているデジタル庁創設に先立ち、国税庁はこのほど「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション 税務行政の将来像2.0」を公表しました。これにより、平成29年6月公表の「税務行政の将来像」を改訂、「デジタルを活用した、国税に関する手続きや業務の在り方の抜本的な見直し」に取り組んでいく方針を明確にしました。
●あらゆる税務手続きが税務署に行かずにできる社会
税務署に行かずに、申告・届け出・特例適用状況・相談を可能にするとし、主にイータックスやマイナポータルを活用することで、申告はもちろん、届出書関係のワンスオンリー(一度提出した書類は、二度提出することを不要に)や、青色承認や消費税の選択関係、納税の状況についての確認、タックスアンサーの利便性の向上やチャットボット(質問に対してAIが自動で回答を表示させるサービス)の活用、個々の納税者の状況に応じた情報をプッシュ型で提供する仕組みなどを実現するとしています。
●課税・徴収の効率化・高度化
申告・決算情報や資料情報、民間情報機関や外国税務当局からの情報なども活用し、データマッチング・リスク分析などを行い、申告漏れの可能性が高い納税者を判定、また、接触が困難な滞納者に対しては、架電履歴情報などをデータベース化し、接触効率が高いと予想される日時(曜日や時間帯)を抽出条件としたコールリストの自動作成を可能とする。税務調査や滞納整理のために必要な預貯金情報について、金融機関等への専用回線による照会・回答を得るためのオンラインシステムの構築により、課税・徴収の効率化、高度化に取り組んでいくとしています。
これらのうちいくつかは、かなり前から既に広く普及しており、申告や届出関係、納税などの手続きはすべてオンラインで可能となっており、電子申告の普及率は令和元年時点で法人が87.1%、個人が59.9%となっているようです。
課税・徴収の効率化については、これまでも税務署には利益率の過去との変動による比較情報などを基にした、税務調査先ランキングプログラムがあると言われていますが、最終的には調査官の経験と勘で調査先を決めているのが実情でした。
しかし、今後は膨大なデータを組み合わせたAIに、過去の調査履歴なども学習させた上で、税務調査先を自動で判別するといった社会になる見通しです。
主な開始予定時期は以下の通りとなっております。【一部抜粋】
・金融機関などへの照会・回答・・・・令和3年10月
・滞納者コールリスト作成システム・・・・令和4年4月~
・調査先判別次世代システム・・・・令和8年リリース
(斎藤 勝)