国税庁は2021年10月1日に、「年末調整控除申告書作成用ソフトウェアV2.0」を公開いたしました。令和3年の年末調整に対応すべくアップデータが行われており、今回は、多くの顧問先様の従業員の年末調整を毎年行っている会計事務所の立場で、このシステムの操作性や機能、使い勝手について確認をしてみました。こちらのアプリはウィンドウズ、マック、IOS、アンドロイドに対応しており、一般的に利用されているデバイスであればインストールが可能となっているようです。
アプリを起動すると、まずは基本情報の入力画面に入ります。IDパスワードの設定を行い、自身の氏名や住所、所得情報や住宅ローン減税の有無、勤務先情報について入力をしていきます。配偶者がいる場合には、配偶者の所得も入力が必要です。所得がわからない場合には、年収から自動計算で所得額を割り出してくれる機能がついています。
次に配偶者及び扶養親族の氏名・生年月日・所得について情報を入力します。こちらも所得情報が必要ですので、配偶者はもちろん、アルバイトをしている子供がいれば、それらの情報を確認して入力していきます。そのままの流れで、基礎控除・配偶者控除へと続き、保険料控除の入力画面では、生保・地震・社保・小規模企業共済といった保険情報を入力していきます。この時、保険会社から控除証明書の電子データを取得していれば、それをインポートする事もできます。保険会社や保険種類は選択肢の中から選択する方式になっており、選択肢になければ「その他」を選択し、保険会社名などを手入力します。
一通り入力が完了しますと、入力内容の最終確認画面が表示され、間違いがなければデータ出力により、パソコン等にデータとして保存し、そのデータを会社へ受け渡しが可能です。
これまで、年末に各種控除申告書を会社が従業員へ配布して回収していた手間を考えれば、配布不要、データ回収になるという点においては、うまく機能するようになれば互いにメリットにはなるでしょう。
また、各種控除額算定には自動計算機能を使えるので計算間違いなどの心配もありません。ただし、このアプリは最終的な年末調整の計算までを一貫して行えるというものではなく、あくまでもこれまで会社に提出していた各種控除申告書類のデータ化にすぎない事であることは注意が必要であり、また、効率を最大化するための保険料控除証明書の取得などには、従業員本人によるマイナポータルとの連携が必要です。マイナンバーカードの普及率が4月1日時点において全国で28%ほどである現状を考えますと、まだまだハードルが高いと感じました。
また、ソフトを開発しているベンダーによって、年調ソフトとの互換性に対応する会社とそうでない会社があり、本格利用にはしばらく時間がかかりそうです。
(斎藤 勝)