2022年3月に中小企業庁より公表された2022年版中小企業白書・小規模企業白書の概要では、「事業者の自己変革」をテーマに中小企業に必要な取組を取り上げていますのでその一部をご紹介いたします。
- 共通基盤としての取引適正化
・エネルギー価格・原材料価格の高騰への対応だけでなく、中小企業における賃上げといった分配の原資を確保する上でも、取引適正化は重要。
・販売先との交渉機会が設けられていない企業では、「価格転嫁できなかった」とする割合が6割超と高く、価格転嫁に向けては、販売先との交渉の機会を設けることが重要。
- 共通基盤としてのデジタル化
・デジタル化により業務効率化などに取り組む事業者(段階3)は増加している
・一方で、依然として紙や口頭による業務が中心の事業者(段階1)が一部存在するとともに、デジタル化によるビジネスモデルの変革など、DXに取り組めている事業者(段階4)も約1割にとどまる。
表1:デジタル化の取組段階
段階1(8.2%) | 紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態 |
段階2(34.9%) | アナログな状態からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態
(例)電子メールの利用や会計業務の電子処理業務でデジタルツールを利用している |
段階3(46.7%) | デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態
(例)売上・顧客情報や在庫情報などをシステムで管理し業務フローの見直しを行っている |
段階4(10.2%) | デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態
(例)システム上で蓄積したデータを活用して販路拡大、新商品開発を実践している |
- 共通基盤としての経営力再構築伴走支援
・経営者自らが自己変革を進めるためには、支援機関との対話を通じて、経営課題を設定することが重要。そのためには、第三者である支援者・支援機関が、経営者等との信頼関係を築き、対話を重視した伴走支援を行うことが有効。
表2:自己変革への「5つの障壁」段階
段階1
見えない |
企業内部の可視化が出来ておらず、本質的な課題を見極めるための前提条件が整っていない |
段階2
向き合わない |
経営者が現実を直視せず、優先課題の適切な設定と課題解決に向けた施策の落とし込みができない |
段階3
実行できない |
組織内外のしがらみや経営者の心理的障壁等を捉えられておらず、課題解決策の実行がされない |
段階4
付いてこない |
現場への巻き込みが不十分で、現場レベルに即した取組みとなっておらず、誰も当事者意識を持って課題解決に臨まない |
段階5
足りない |
課題が明確となり、リソースの確保と意欲の醸造もできたが、課題解決のための知見や経験が足りない |
・「自己変革力」を高めるためには、「経営力そのもの」に迫る的確な課題設定が重要。
税理士 久保 康高