利益の出ている同族会社の経営者から配当をしたいがどうかという質問を受けることがあります。今号では、配当金を払うことによるメリットとデメリットをご紹介致します。
◎メリット
〇役員報酬としないことにより、社会保険料の料額(標準報酬等級)を上げないで済む。
特に年金受給者の経営者にとっては、月額の役員報酬を在職老齢年金支給停止基準額である47万円へ達しないようにしたい場合には有効となる可能性もあります。
〇配当金を受け取った個人は配当収入金額の10%を配当控除できる。
配当収入は所得税・住民税について総合課税となるものの、所得税については収入額の10%、住民税については2.8%の配当控除を受けることができます。
〇従業員に一定割合の株を持たせている場合はモチベーションアップに繋がる。
経営陣が株式を所有していることがほとんどですが、一定割合を従業員に所有させている場合は、会社の利益に応じて配当金を受け取れる仕組みは、業績の向上と配当額がリンクしモチベーションアップに繋がることがあります。また株主となった従業員は「自分だけが良ければいい」という考え方から会社全体のことを考えて働くように変わると言われております。
◎デメリット
〇支払利息のように経費(損金)にはできない。
通常、配当金は利益剰余金の中から支払われますが、利益処分として繰越利益剰余金のマイナス処理となるので、支払利息のように経費(損金)にはなりません。つまり、単に純資産(内部留保)が減るだけということになりますので自己資本比率の低い会社が配当をする場合には注意が必要です。もし仮に、配当金が経費にできてしまったら利益を全額配当に回して法人税を0円にすることが可能となってしまうため損金にできない仕組みになっています。
〇配当金を受け取った個人の所得税・住民税は総合課税となる。
非上場会社の配当金は20.42%の源泉所得税が徴収された上で他の所得と合算する総合課税となります。所得税は超過累進税率で最高税率45%となっており、住民税を含めると最大で55%となります。なお、年間10万円までの少額配当金に関しては、源泉徴収のみで完結し、配当金を受け取ったことについての確定申告を行う必要はありません。
なお、いくら当期の事業年度で多額の利益が出ていたとしても純資産が300万円未満の会社は配当自体が許されておりません。逆に大赤字の事業年度であっても純資産が300万円以上で配当の原資がある場合は、安定配当をすることは可能です。
法人税等の実効税率は31~34%です。個人は配当所得と給与所得を合わせて900万円超の場合に住民税を含めて税率が43%となり負担が大きくなります。特に会社が小さいうちは、配当はできるだけせずに内部留保に回して資本を充実させたり、設備投資・人材投資・集客販促投資・広告宣伝投資のための資金に充てる方が会社の成長・発展に繋がります。
税理士 久保 康高