今年もいよいよ残すところ1ケ月余りとなりました。この時期になると、ふるさと納税の寄附限度額についての相談が増えてくるように思います。個人でのふるさと納税については既に認知度も高く、メリットなどについても良く知られていますが、一方で企業版のふるさと納税についてはどうでしょうか?もともと平成28年4月にスタートした企業版ふるさと納税ですが、制度がはじまった当初は個人版に比べてもこれといったメリットも少なく、税額軽減効果は寄附した金額の最大6割ほどにとどまっており、ほとんど活用している企業はなかったという印象があります。そこで今回は現在の企業版ふるさと納税の制度はどうなっているのか?改めて確認したいと思います。
- 改正によって最大で寄附額の最大9割の軽減効果に
以前までは、寄附額が損金になることによる※約3割の節税効果と、寄附額の3割までの税額控除との合計で6割ほどの税額の軽減効果となっていましましたが、現在は税額控除限度が寄附額の6割まで拡充されており、損金算入による3割の軽減効果と合わせて寄附額の最大9割となっています。この9割の具体的な内訳は以下の通りです。
□従前どおり寄附額が全額損金になることによる3割の税額軽減
□法人住民税の法人税割額から寄附額の4割を税額控除 (法人税割額の20%上限)
□法人事業税から寄附額の2割を税額控除 (事業税の20%上限)
□法人税から寄附額の1割を税額控除(法人住民税で4割に達しない場合に残額を控除)
※全額損金による3割の節税効果とは、例えば100を寄附した場合には、100全額が経費(損金)になるため、法人税等の税率が30%と仮定すると100×30%=30の税金が軽減される。
これらの要件の緩和もあり、制度が開始された当初の平成28年は寄附した企業数517件、寄附額7.5億円であったが、改正が行われた令和2年にあっては寄附した企業数2,249件、寄附額110億円と増加傾向ではあるものの、同年の個人版ふるさと納税の寄付件数が3,488万件、寄附額6,700億円である事を考えると、まだまだ実績は少ないといえます。
1回あたり10万円以上の寄附が対象、寄附の代償として経済的な利益を受けることは禁止、本店所在地の寄附は対象外といった留意点があり、個人版のような返礼品といったものはありませんので、寄附をする目的があまり明確ではありません。
では企業は何を目的に寄附をするのでしょう?企業版ふるさと納税ポータルサイトには、さまざまな地方公共団体が寄附金を活用して行う事業プロジェクトが掲載されており、それら活用事業の方針などに賛同できる寄附先を選定することになります。それらのプロジェクトに寄附という形で参加することにより、プロジェクトを通してSDGsへの貢献を外部へPRする、地方公共団体と関係性を構築し、新規事業展開に繋げるいった形で、会社を成長させる為の機会の一つにする等、広告費や営業費をかけたつもりで寄附をする・・という考え方もあるかもしれません。
(斎藤 勝)