以前から、弊社のデジタル事務所通信の中でインボイス制度については何度か取り上げてきました。登録申請の原則的な期限が令和5年3月31日ということもあり、多くの経営者の方から制度の内容についての質問や申請依頼を受けることが増えてきました。そこで、今回は令和5年税制改正大綱に盛り込まれているインボイス制度に関する改正案について、ご案内します。
(1)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
インボイス制度の申請をするという事は、消費税の課税事業者になるという事を意味します。そのため、もともと課税事業者だった事業者にとっては、インボイス制度の登録申請を行うというのは当然の選択であり、むしろ、取引のある仕入先や外注先が申請するのかどうか?という確認だけが悩みの種でした。よって、登録申請の可否にあたって検討が必要となるのは、これまで免税事業者だった事業者なわけです。免税事業者はどちらが会社にとって有利か?を慎重に検討し、決断を下す必要がありますが、多くの事業者が登録申請をするという回答をされるケースがほとんどです。その理由は様々ありますが、取引先との関係性など、対外的な理由をあげる事業者の方が多い印象です。
そういった事情でやむなく申請の決断をされた免税事業者にとっては、今回の経過措置は税負担と事務負担の軽減という観点からもメリットがある可能性があります。簡単に言いますと、売上に係る消費税額の20%だけを申告・納税すればいいという事です。原則的な消費税等の計算は、預かった消費税と、支払った消費税をそれぞれ集計し、預かった消費税額のほうが多ければ納税、少なければ還付という流れになるわけですが、この経過措置を適用すれば支払った消費税については考慮する必要はなく、単純に「預かった消費税の2割」を納税すればよいことになります。同じような計算方法に「簡易課税」という仕組みがありますが、これは業種によって決められている10%~60%の範囲で納税額を計算する必要があるため、製造業、建設業、飲食業、サービス業、不動産業など預かった消費税に対する納税割合が20%を超える事業を行っている事業者にとっては、有利に働きます。また、この適用を受けるために事前の届け出などは必要なく、申告書にその旨を付記することで選択適用することができます。ただし、この措置は令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する課税期間限定の経過措置になります。
(2)その他の改正案
インボイス制度がらみの改正案で一番のポイントは上記の内容になりますが、それ以外には、登録申請手続きの柔軟化として、これまで令和5年3月末までの申請期限を過ぎて申請をする場合には、「申請が困難な事情」を記載する必要がありましたが、そういった記載が不要になった事や、課税売上高が1億円以下である事業者については、制度施行から6年間は1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで税額控除が可能となるなどの細かい改正案が盛り込まれております。ご不明な点は、お気軽に担当者までご相談ください。
(齊藤 勝)