インボイス制度では、「適格請求書発行事業者」に登録されている者が発行した「適格請求書(インボイス)」を受領・保管することで仕入税額控除の適用を受けることが出来ます。
口座振替・口座振込により事務所家賃等の支払をしている場合、不動産賃貸借契約書は作成しているが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳に口座振替の記録が残るだけです。通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。
適格請求書(インボイス)の記載事項(すべて必須)
① 適格請求書発行事業者(貸主)の氏名又は名称
② インボイス登録番号
③ 取引年月日
④ 取引内容
⑤ 税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
⑥ 消費税額等
⑦ 書類の交付を受ける事業者(借主)の氏名又は名称
適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
(1)インボイス制度以前の不動産賃貸借契約
すでに締結している契約においては上記②インボイス登録番号や、⑤⑥の消費税に関する事項が契約書に記載されていない場合があります。この場合、新たに契約書を締結する必要はなく、不足事項を貸主から通知してもらい一緒に保存することで、インボイスとしての要件を満たすことになります。③の取引年月日(家賃を支払った日)について、口座振替により家賃を支払う場合は通帳のコピーを、口座振込により家賃を支払う場合は、銀行から受領する振込金受取書を一緒に保存します。
(2)新規の不動産賃貸借契約
今後締結する契約については、予め契約書に③の取引年月日(家賃を支払った日)以外の事項をすべて記載しておくことが大切になります。併せて通帳のコピーか振込金受取書を保存することで、インボイスとしての要件を満たすことになります。
取引の都度、請求書等が交付されない取引については、相手方が適格請求書発行事業者であるかどうかわからない場合があり、必要に応じ「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください。
(伊藤 淳二)