厚生労働省より、令和4年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労基署が実施した監督指導の結果が公表されました。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象に行われたものです。厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとのことです。指導事例等も公表されているので、概要を紹介します。
◆監督指導結果のポイント
(1) 対象期間:令和4年4月~令和5年3月
(2) 対象事業場:33,218件(この内、30人未満の事業所が25,198件・全体の75%)
(3) 主な違反内容((2)のうち、法令違反があり是正勧告書が出された事例)
1.違法な時間外労働があった:14,147事業場(42.6%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を 超えるもの:5,247事業場(37.1%)
・うち、月100時間を超えるもの: 3,320事業場(23.5%)
・うち、月150時間を超えるもの: 752事業場( 5.3%)
・うち、月200時間を超えるもの: 168事業場( 1.2%)
2.賃金不払残業があった:3,006事業場(9.0%)
3.過重労働による健康障害防止措置が未実施:8,852事業場(26.6%)
◆指導事例のポイント
違反内容で4割超を占め、違法な時間外労働が行われていたとして、労基署が行った主な指導事例を紹介します。
◇長時間にわたる違法な時間外・休日労働を行わせたこと
・36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたことについて是正勧告
・労基法に定められた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたことについて是正勧告
・時間外・休日労働時間を1か月当たり80時間以内とするための具体的方策を検討・実施するよう指導
◇時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者に対し、時間外・休日労働の情報を提供しなかったこと
・時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者に対し、かかる時間外・休日労働時間に関する情報を通知していなかったことについて是正勧告
◇休日労働に対する割増賃金を支払っていないこと
・休日労働について3割5分以上の割増賃金を支払っていないことについて是正勧告
社会保険労務士 神山 真由美