売上金の入金時に、合意のもと振込手数料を差引いて入金される(売主負担)ことがあります。現状では差引かれた金額を振込手数料や雑費等で処理することがほとんどだと思います。しかし、インボイスが開始される10月以降の処理については注意が必要です。差引かれた振込手数料について当事者間の契約関係等により売手が振込手数料相当額を値引きとする方法や振込手数料の立替払いをしたとして処理する方法などいくつか考えられますが、今回は売上値引きとする方法についてお知らせします。
国税庁適格請求書保存方式に関するQ&Aより抜粋
【問】売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が負担する商慣行があります。この売手が負担する振込手数料相当額について、適格請求書等保存方式の開始後、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合に、必要となる対応を教えてください。
【答】売手は振込手数料相当額について売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を行っていることとなりますので、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります(新消法57 の4③、新消令70 の9③二)。
ご質問の場合は、売上値引きの金額が1万円未満であるため、当該売上値引きに係る適格返還請求書の交付は必要ありません。
【問】当社は、振込手数料負担額を支払手数料として経理処理していましたが、適格請求書等保存方式の開始後においては、売上げに係る対価の返還等として経理処理することを考えています。この場合、どのような対応が必要となりますか。
【答】ご質問のように、支払手数料としての経理処理を適格請求書等保存方式の開始後、売上げに係る対価の返還等としての経理処理に変更することは問題ありません。
また、経理処理を支払手数料としつつ、消費税法上、売上げに係る対価の返還等とすることもできます。支払手数料のコードを売上げに係る対価の返還等と分かるように別に用意するといった、通常の支払手数料と判別できるように明らかにする対応が考えられます。
※売手が買手に対して売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率に従います。そのため、軽減税率(8%)対象の課税資産の譲渡等を対象とした振込手数料相当額の売上値引きには、軽減税率(8%)が適用されます。
【まとめ】
インボイス適用後の売上金の振込入金時に差引かれた振込手数料についての処理は
- 売上値引きで処理。 又は
- 支払手数料・雑費等で処理し、消費税のコードを売上に係る対価の返還等に変更。
のいずれかの方法が事務負担の増加が抑えられると思われます。
(水田 裕之)