近年、結婚をしないという選択をされる方が多いように思います。また、子供に恵まれないご夫婦が、配偶者に先立たれるなど、おひとりさまとなられる場合もあります。
今回は、そんなおひとりさま(独身者)の相続について、生前にできる対策についてお話いたします。
独身者の方で、直系尊属(父母や祖父母)がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となるため、相続人と被相続人(本人)、また、相続人間の関係が疎遠で話し合いが困難になるなど、もめごとに発展するケースが多々見られます。
また、最近は高齢化が加速しており、独身の方が認知症などで自身での財産管理や、施設との契約行為が困難となった場合に、誰が財産の管理や身の回りの世話をするのかといった問題も生じます。
そのためおひとりさまの相続対策として大切なことは、以下となります。
- ご自身の財産を把握して、その継承先を決めておくこと。
- 判断能力が欠けたときに備え、財産管理や身の回りの世話、また、死後の事務を依頼する人を決めておくこと。
(2.の対策としては
※ 2023年3月22日号事務所通信 『死後事務委任契約とは』
※ 2023年6月28日号事務所通信 『任意後見制度とは』
など をご参照ください)
ここでは、1.について解説いたします。
独身者の相続では、遺言書を作成し財産の継承先を指定しておくことが重要となります。
第一段階として、自身の相続人を確定する所から始めてください。直系尊属が亡くなっている場合は、兄弟姉妹が法定相続人となります。(父母の一方が同じ兄弟姉妹も含まれます)兄弟姉妹が先に死亡している場合は、兄弟姉妹の子、甥・姪などが代襲相続人となります。
次に自身が所有する財産の目録を作成してください。万一の時、財産がどこにあるか分からず、残された方が苦労するのを防ぐためです。その後、その財産を誰に継承してほしいか決め、遺言書を作成します。この場合、公正証書の遺言をお勧めします。公証人が作成するので、遺言の内容の誤りがなく、遺言能力も問題になりにくいため、遺言書をめぐっての争いが生じにくいからです。また、遺言執行者を指定しておくことも重要です。財産を継承する人が、相続関係の手続きに不慣れな場合は、弁護士・司法書士などの専門家に依頼し、遺言執行者になってもらうことも可能です。
何事も、転ばぬ先の杖、健康なうちの対策をお勧めいたします。
相続診断士 平林 明子