政府は約束手形の決済期間を60日以内とする運用を開始する予定であることを発表しました。今回の改正は下請法の指導基準の変更という形での運用になります。
公正取引委員会及び中小企業庁は令和3年3月に、おおむね3年以内(令和6年)を目途として手形サイトを60日以内とするよう業界団体及び親事業者に要請しており、支払サイトが60日を超える手形等を割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とすることを前提に下請法の運用の見直しを検討することとしていました。
一括決済方式(ファクタリング方式)及び電子記録債権が支払手段として用いられる場合についても支払いサイトを60日以内とする予定です。
新しい指導基準は令和6年4月に決定され、半年程度の周知期間を置き、令和6年11月1日から運用を開始する予定です。
60日超の手形サイトで支払いを行った場合には、下請法に基づき指導を受けることになります。
※下請代金支払遅延等防止法(下請法)とは
下請法は下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的としています。
・親事業者、下請事業者の定義
a.物品の製造・修理委託及びプログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理
親事業者 下請事業者
資本金3億円超 → 資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1千万円超3億円以下 → 資本金1千万円以下(個人を含む)
b.上記以外の情報成果物作成・役務提供委託
親事業者 下請事業者
資本金5千万円超 → 資本金5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下 → 資本金1千万円以下(個人を含む)
下請法の対象となる業種は上記a、bにおいて定義されていることから、対象に入っていない建設業や小売業、卸売業など下請法の対象から除外されている業種についてはどうなるのか気になるところですが、例えば建設業については国土交通省が建設業法令遵守ガイドラインにおいて今回の公正取引委員会及び中小企業庁が指導の対象とすることを前提として手形サイトを60日以内とする運用の見直しの検討を行うとしており、対象業種は広がっていくことが予想されます。
また、政府は紙の約束手形・小切手について2026年度に利用廃止を決定しており、これを受けて全国銀行協会は手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画において2026年度末までにゼロにすることを掲げています。
(水田 裕之)