事業を行っていく上で不確実性の高い新たな挑戦を決断した際、入念なリサーチや計画を重視するのではなく、まずは手元のリソース(資源)で何が出来るか?を考え、試行錯誤を繰り返しながら、困難さえも逆手にとって主体的かつ柔軟に対応していくべきとする、エフェクチュエーション理論(事務所通信vol.969号参照)という考え方が近年注目されています。このエフェクチュエーションと対比される意思決定理論として「コーゼーション」という考え方があります。今回はこのコーゼーションの意思決定のプロセスやメリットデメリットについて取り上げます。
「コーゼーション」とは日本語では「原因、因果関係」と直訳される通り、まずは目標を明確に設定するところからスタートします。その上で、その目標を達成するための計画を入念に立て実行していく考え方です。一般的には既存のビジネスや安定した環境で用いられることが多いアプローチといえます。
「コーゼーションの主なプロセス」
- 目標設定・・・最終的に目指すべきゴール(目標)を先に設定する。
- リソースの調達・・・目標を達成するために必要な資源を確認、調達する。
- 計画立案・・・詳細な行動計画を作成する。
- 実行・・・計画に沿って行動し、目標達成を目指す。
コーゼーション理論は目標から逆算して行動を決めて実行するという考え方、一方でエフェクチュエーション理論は最初から目標の設定はせず、手元にある資源の範囲で実行できる事を探し、軌道修正をはかりながら柔軟に事業を展開していくという考え方のため、それぞれの違いについて比較されることが多い論点ですが、この2つはどちらが良い悪いという事ではありません。
コーゼーション理論は、計画に基づいて行動するため、組織全体の行動が一貫しやすい、進捗管理や予測管理がしやすい、資源の効率的な配分ができる、成功体験の再現性が高いなどのメリットがある一方で、予期せぬ事態が起こった際に柔軟に対応しづらい、新しい発想が採用されにくい、過剰な投資につながりやすいなどのデメリットがあります。その為、この2つの考え方は自社が置かれている状況に応じて、それぞれ両立して考えていくことが重要だと言われます。
これから始めようとする事業が前例などに基づいたデータなどによって、必要な情報収集が可能であると判断されるような不確実が低い場合にはコーゼーション理論を、必要な情報がほとんど得られない不確実性の高い事業と判断される場合には、様々な可能性を排除しないエフェクチュエーション理論を使うといった具合に、使い分ける事ができれば様々な展開が見えてくるかもしれません。
(齋藤 勝)