2024年中小企業白書によりますと、企業の経営方針として「成長のために行動するべき」と回答した割合が全体の約9割と、2020年時点の約6割と比べ3割近く増加。2020年時点では「損失を避けるために投資行動は行わない」と慎重な姿勢をとっていた企業の多くが、ここ3年の間に自社の方針を成長路線へ切り替えている様子が見て取れます。
一方で、「成長のために行動すべき」と回答した9割の内、実際に行動に移している割合はというと約半数程度であり、方針と行動が必ずしも一致していないという側面もあります。
行動できていない半数の企業や、そもそも投資行動は行わないと回答している企業には、どういった課題があるのでしょうか。自社の成長を望まない経営者など存在しないという前提に立って考えた時に、どんな課題が行動を抑止しているのか、また、その対応としてどんな手段が考えられるのか、「損失を避けるために行動は行わない」と回答した経営者が挙げた理由の中から、回答数の多かった順にいくつか取り上げてみたいと思います。
「リスクに見合う効果が得られるとは思わない」49.3%
一番多かった回答理由が、このリスクに対する効果の不確実性によるものです。リスクを恐れることは自然なことですが、適切な戦略と準備があればリスクを軽減しながら成長を目指すこともできるはずです。「とりあえずやってみる」という、勢いにも似た行動力も経営者には必要な資質と言われますが、それは玉砕覚悟でチャレンジするという意味ではなく、その判断の根底には入念に考えられた戦略やシミュレーションがあり、その上で一定の勝算が見えているからこその決断ではないでしょうか。現状のやり方を変える、新しいことを始める、いずれも行動に移すには勇気が必要です。だからこそ、その不安を取り除くための具体的かつ詳細な計画策定こそが最初の一歩を踏み出す後押しとなります。
「行動を起こすための資金が足りない」30.6%
投資の資金調達方法として銀行借入を最初に検討される場合が多いと思いますが、将来の返済負担を考えると慎重にならざるを得ません。そんな時はまず政府や地方自治体による補助金や支援策がないか検討してみてください。投資リスクを軽減する大きな助けとなります。
「行動を起こすための人材が足りない」29.3%
最近では特に人材不足が大きな問題になっているのは事実です。それが行動の妨げになっている場合には、外部の資源を活用することも一つの解決策です。外部に任せられる業務が存在しないか、社内の業務内容について一度棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。
今回取り上げたような原因が、次の行動を抑制する足かせになっている現状がもしあるならば、その原因を取り除くために出来る事を是非考えてみてください。
(齋藤 勝)