税制改正大綱は、日本政府が毎年まとめる税制の変更方針を示した文章のことです。主に、次年度の税制改革に関する具体的な内容や方向性が記載されています。この大綱を基に、税制改正案が策定され、国会で審議・決定されます。毎年12月に発表される「税制改正大綱」を見ることで、税制改正の大きな流れをつかみ、自身に関係のある情報を見つけ出すことができます。今回は、税制改正大綱の基本的役割などについて掲げてみました。
1)税制改正大綱の特徴と役割
①政策の基本方針を提示
税制改正大綱は、経済成長、少子高齢化対策、環境保護、地方活性化など、その時期の日本が直面する課題に対応するための税制方針を示します。
②具体的な税制改正項目を明記
所得税、法人税、消費税、相続税、資産税など、どの税目がどのように改正されるかが具体的に記載されます。
③与党主導で策定
与党(自由民主党と公明党)の税制調査会が主導して策定します。各省庁からの要望や経済界、地方自治体の意見も取り入れられます。
④政府と国会の橋渡し
大綱の発表後、政府が具体的な税制改正案を作成し、国会に提出して法案として審議されます。
2)税制改正大綱の策定スケジュール
◆夏~秋:各省庁や地方自治体、経済団体が要望を提出。
◆年末(12月中旬):与党税制調査会が税制改正大綱を決定し、公表。
◆翌年1月~3月:国会で税制改正法案を審議。
◆4月:新年度の開始とともに改正内容が施行されることが多い。
3)現時点(12月18日)での税制改正事項(例)
◆与党(自由民主党と公明党)で固めた改正事項
・働く年金受給者の控除に280万円の上限
・子育て資金の一括贈与の非課税措置延長
・iDeCoと企業型併用の掛け金上限7000円上げ
・NISAつみたて枠のETF商品拡充への要件変更
・事業承継税制の特例で後継者に絡む要件を緩和・・・等々
◆国民民主党との協議待ち
・「年収103万円の壁」上げ幅
・特定扶養控除を年収150万円以下に緩和で調整・・・等々
税制改正大綱は、経済政策や社会政策に直結するため、企業や個人にとって大きな影響があります。次回以降、2025年税制改正大綱について解説させていただきます。
税理士 廣島 清量